地域の憩いの場となるモミジのお庭

愛知県西尾市の普元寺様より、休憩室と寺務所の新設に合わせて作庭の依頼をいただきました。
普元寺様は近年、境内でカフェやマルシェを開催するなど地域の方々が集う憩いの場となっています。
そんななか、お寺に来た方が安らぎを感じられるような、モミジのお庭を作庭してほしいというご要望でした。

ご要望の具体的な内容
・既存のお寺の境内に調和するようなお庭
・モミジのお寺として地域の方々が楽しめるお庭
・石組を使った力強いお庭ではなく、優しさや柔らかさを感じるような雰囲気のお庭
・新設の建物やテラスからの景色を楽しめるお庭

ご住職から何度もお話をお聞かせいただき、その想いを実現させるため、デザインを試行錯誤して考えました。
もみじのお寺に相応しいお庭、参拝客を和ませる水鉢、新設した休憩室からの景色、プライベートの確保、季節の花々・・・

工夫を重ねてできたお庭は、多くの方に楽しんでいただけるお庭となりました。

「もみじのお寺」に相応しいお庭をデザイン

普元寺様は、ご依頼をいただいた時点で既に、境内にはモミジが沢山植っており、秋になると写真を撮りに来る方がいらっしゃいました。
その紅葉を生かし、新しく新設する施設の名称は「もみじの森のテラス」。

その名称に名前負けしないよう、イロハモミジを中心に樹種を選びました。

苦労したのは、新設した休憩室での開館記念イベントに間に合うように、できるだけ大きなモミジを集めること。
4ヶ月間という短い期間で、樹木を集めるのに苦労しましたが、あちこちに足を運び、無事イベント当日にはお客様の目を楽しませるモミジのお庭が完成しました。

参拝客を出迎える水盤のあるアプローチ

お客様が訪問する際に通るアプローチはカーブをつくり、丸みを帯びたむくり屋根の建築と調和して、柔らかい雰囲気を醸し出しています。


また、アプローチの左脇では、水盤が参拝客を出迎えます。
この水盤は、手作りの世界に一つだけの水盤で、お庭に瑞々しさを与えています。行事の際には水盤の上にお花を浮かべて、空間を彩ります。

盛り土をして高さのある地形に対応

新設した建物は、境内地の他の場所よりも50cm程高い位置にありました。
その建物に合わせて、盛り土を行って土留めを造りました。土留めの石は、以前この場所にあり、新築に当たって取り壊された建物から出てきた長石を使用しています。

土留めは、掃除や植栽の管理をする際に通るための通路としての機能も果たしています。

四季を彩る花々

季節の花々を見つけたとき、小さな感動を覚えます。
そんなささやかな幸せをここで見つけていただけるよう、植物を選びました。普元寺様の俳句教室では、季節の花を詠んでくださっているそうです。

例:
アセビの花:3月~4月
ミツバツツジの花:4月中旬~下旬
ヒメクチナシの花:5月~7月
ヤマボウシの花:5月~7月
ヤブランの花:8月~10月
ソヨゴの実:10月~11月
イロハモミジの紅葉:11月下旬~12月上旬
ツバキの花:2月〜3月

お庭を通して地域の方々の居場所づくり

普元寺様のホームページには、「地域の皆さまの身近な拠りどころとなることを願って様々な活動をしています」と書かれています。
その言葉通り、現在普元寺様は、沢山の方々が訪れ、ゆったりとした時間を過ごす場所になっています。

今回の作庭を通し、そんな普元寺様の想いに応え、地域の方々の居場所づくりに貢献できていれば嬉しいです。